2016年10月21日

問い:私はダメな人間です

答え:大丈夫。そこからスタートです。

ついこの前までは自分の後ろを歩いていた人が、気が付けばずっと先を走っているということがあります。人は当たり前のようにできているのに、自分には同じことができないということもあります。そんな時、人をねたんでも、ふてくされても、結局は自分がむなしい気持ちになるだけです。だから仕方なく自分を責めます。ダメな人間だと前もって宣言することで、人から見下げられないようにしているのかもしれません。でも、そのように自分を卑下することが何の役に立つでしょう。心の痛みはどんどん増えるばかりです。そんな時、私は「ダメな自分も丸ごと愛してください」とお話しします。「ダメな自分に打ち勝て」とは言いません。勝てばいいですが、負けたらどうしますか。結局は堂々めぐりです。勝ち負けでは解決しません。

今から800年ほど前の鎌倉時代、親鸞(しんらん)という偉いお坊さんがいました。親鸞さんは「人の心の中には、恐ろしい毒を持ったヘビやサソリが住み着いている。どんなに善人でも、小さなきっかけ一つでたちまちそれらが現れて毒を吐く。人間というのは簡単に周りに影響されてしまい、その時々で善にも悪にも染まる。とても弱くて、愚かで、もろい生きものなのだ」というようなことを言っています。そしてその上で「自分を良く見せるために虚勢を張ったり、嘘を言ったり、ごまかしたりせずに、ダメな自分を素直に認めて、そのままで仏さまにおすがりしなさい」と言っています。私が「ダメな自分を丸ごと愛してください」と言うのも、私にも親鸞さんと同じ思いがあるからです。

ただし、私は、仏さまにおすがりするだけでなく、自分の力でより良い未来を切り開く努力が必要だと思っています。そして努力する私の背中を仏さまが押してくださるのだと信じています。ダメな自分も立派な自分も両方とも同じ自分です。ですからダメな自分も大切にしてほしいのです。ダメな自分を隠さずに知っているから、それを反面教師にして立派な自分を育てることができます。「すべてがうまく行っている」と思えても、何かの拍子に簡単にダメな自分に逆戻りすることもあります。そうならないように、緊張感を持ちながら、いつも気をつけていることが大切なのです。“ダメな自分”が、緊張感を持続させてくれます。

「ダメな自分だけれど、人に自慢できる事でもないけれど、これだけは心の中で守っている。これだけはまじめに続けている」という事を持つようにしましょう。ダメな自分を認めながら、しかし「これならダメな自分にもできる」という事はちゃんとやるということです。途中でギブアップしてもかまいません。ちょっと休んだら、また始めましょう。自分のスピードでやり続けることです。やれる事は人それぞれです。人と比べる必要はありません。大切なのは続けることです。まず一ヶ月、次に三ヶ月です。三ヶ月続けられれば三年は大丈夫。三年続けられれば一生大丈夫です。

“継続は力なり”という言葉があります。続けられることは、そのままあなたの力となり、生きる自信となります。そうこうしている内に、頑張っている自分が好きになっていることでしょう。それも本当の意味で、自分を愛せる人になっています。勝ち負けや優劣といった対立の関係から一歩退いて落ち着いていられる自分を愛するのです。自分が話題の中心にいなくても、縁の下の力持ちでしかないとしても、そんな自分をニッコリ笑って愛するのです。世間の価値観に振り回されることなく、自分のやれること、やれないことを知っている人、ダメな自分から目を背けない人だから、人の弱さや悲しみが分かるのです。そこに、人を憐れみ人を愛する気持ちが生まれます。つまり、ダメな自分を愛せる人は、人をも愛せる人なのです。人を愛せる人は、どんな時でも幸せでいられます。これは真理です。

大丈夫。ダメな自分からスタートしてください。

正雲寺副住職 無聖(むしょう)
http://shounji.or.jp

posted by むしょうさん at 08:02| Comment(0) | 人生相談
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